
「知名度のある大手派遣会社へ頼めば、すぐに人を紹介してもらえる」
そう考えて複数の大手へ依頼したものの、数週間たっても候補者が出てこない。こうした事態は、建設、物流、製造、介護など、人手不足が深刻な業界で珍しくありません。
実は、会社の規模と、自社の求人に人を集められる力は必ずしも一致しません。 大手派遣会社には多くの登録者がいますが、同時に膨大な求人案件を抱えています。そのため、依頼しただけで自動的に人材が割り当てられるわけではないのです。
この記事では、大手派遣会社だけに依頼した企業で採用が停滞する理由を、派遣市場の構造と派遣会社側の事情から解説します。
大手派遣会社だけに依頼して人が見つからない最大の理由は、登録者数の多さを、その求人へ紹介できる人数の多さと誤解しているからです。
派遣会社が公表する登録者数には、現在就業中の人、長期間活動していない人、希望条件が合わない人も含まれます。さらに、同じ求職者が複数の派遣会社へ登録しているケースもあります。
つまり、企業が確認すべきなのは会社全体の登録者数ではありません。
募集地域で現在動ける人がいるか
該当職種の採用実績があるか
求人媒体などで新たに集客できるか
自社案件を優先してもらえるか
この4点が、人材紹介の成否を左右します。
派遣会社を3社から5社へ増やしても、候補者の母集団が単純に増えるとは限りません。派遣で仕事を探す人は、複数の求人サイトや派遣会社を併用することが多いためです。
例えば、A社が保有する登録者とB社が保有する登録者の一部が同じなら、依頼先を増やしても実質的な採用市場は広がりません。大手だけに依頼すると、各社が同じ求人媒体で同じ層へ募集をかける状態にもなりやすくなります。
派遣会社の数を増やすことと、異なる人材供給ルートを増やすことは別物です。
大手派遣会社には多くの登録者がいます。一方で、多数の派遣先から求人を預かっています。
営業担当者やコーディネーターは、限られた候補者をどの案件へ案内するか判断します。その際に優先されやすいのは、賃金が高い、勤務地が便利、勤務条件が柔軟、採用決定が早いといった案件です。
これは担当者が怠慢なのではありません。求職者が決まりやすい求人から案内する方が、派遣会社と求職者の双方にとって合理的だからです。
条件面で競争力が弱い案件は、大手の豊富な求人群の中に埋もれる可能性があります。
全国展開している企業でも、すべての地域、職種、資格に同じ強さを持つわけではありません。
一般事務に強い会社が、施工管理者やフォークリフト作業員を集められるとは限りません。都市部で高い集客力を持つ会社でも、地方都市では地域密着型の派遣会社に劣ることがあります。
厚生労働省によると、令和6年度の派遣労働者は約220万人、派遣先は約86万件です。派遣市場は大きい一方、実績のある事業所は3万3,207カ所に分散しています。市場は一部の大手だけで完結しているわけではありません。
出典:厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
大手派遣会社の強みは、法務・労務体制、教育制度、全国的な管理基盤などにあります。しかし、管理体制が整っていることと、特定の求人へすぐ人を出せることは同じではありません。
比較項目 | 大手派遣会社 | 地域・職種特化型派遣会社 |
|---|---|---|
登録者の総数 | 多い傾向 | 限定的 |
抱えている求人 | 非常に多い | 比較的絞られている |
特定領域への理解 | 拠点・担当者による | 深い場合がある |
求人の優先順位 | 社内競合が起きやすい | 個別対応されやすい |
地域の採用経路 | 全国共通の手法が中心 | 地場ネットワークを持つ場合がある |
大切なのは、大手か中小かという二択ではありません。自社の求人に対して、どの会社が具体的な供給方法を持っているかを見極めることです。
人が集まらない企業では、求人票をメールで送り、「紹介できる人がいたら連絡してください」と依頼して終わるケースがあります。
しかし、派遣会社側から見ると、募集背景、条件の優先順位、選考速度が分からない案件は動きにくいものです。必須条件が多く、どこまで緩和できるか不明な求人も後回しになりやすくなります。
成功企業は、派遣会社を増やす前に求人条件を整理します。
例えば、「35歳まで、経験3年以上、資格必須」という条件をそのまま渡すのではなく、経験と資格のどちらを優先するのかを明確にします。職場見学の日程や採否回答の期限も事前に決めます。
企業側のレスポンスが遅い間に、候補者が別案件へ決まることもあります。派遣採用では、条件だけでなく意思決定の速さも求人の競争力です。
以下のうち、3つ以上が「いいえ」なら、派遣会社を増やす前に求人設計を見直すべきです。
必須条件と歓迎条件を分けている
競合求人と比べた時給・派遣料金を把握している
勤務開始日を柔軟に調整できる
職場見学後、原則24時間以内に回答できる
派遣会社へ職場の魅力を説明している
条件を緩和できる範囲が決まっている
各派遣会社の得意職種・地域を確認している
2026年4月時点で、正社員不足を感じる企業は50.6%、非正社員不足を感じる企業は28.3%でした。「人材派遣・紹介」業界自体も非正社員不足の割合が高く、派遣会社も人材確保に苦戦しています。求人企業は、派遣会社に依頼すれば人が生まれるのではなく、限られた人材を他社と取り合っていると認識する必要があります。
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」
まず、大手派遣会社への依頼をやめる必要はありません。管理体制や広域対応など、大手ならではの強みがあるからです。
そのうえで、地域密着型、職種特化型、外国人材に強い会社、無期雇用人材を抱える会社など、異なる供給経路を持つ派遣会社を組み合わせることが重要です。
依頼先を選ぶ際は、会社案内の規模ではなく、次の質問をしてください。
「現在の登録者にいない場合、どの方法で人を集めますか」
この質問への回答が具体的な会社ほど、実際の採用活動をイメージできます。「登録者を確認します」だけで終わる場合は、新規集客まで動いてもらえるか確認が必要です。
派遣会社ごとの得意領域や供給力を、求人企業が一社ずつ調べるには大きな工数がかかります。
このような課題を解決する仕組みとして、ハケンバンクがあります。求人条件に対応できる派遣会社との接点をまとめ、派遣会社を探すのではなく、派遣会社を探さなくていい状態をつくるためのプラットフォームです。
重要なのは依頼先の社数ではありません。自社の求人に適した供給経路へ、正確かつ早く接続できるかどうかです。
大手派遣会社は登録者数や管理基盤に強みがあります。しかし、登録者数が多いからといって、自社求人へ紹介できる人が多いとは限りません。
人が見つからないときは、依頼先を増やす前に、求人の優先順位、地域・職種との相性、派遣会社の集客方法、社内の回答速度を確認してください。
派遣採用の成果を決めるのは、企業規模ではなく、自社求人と人材供給ルートの適合度です。
いいえ。大手には管理体制、教育制度、広域対応などの強みがあります。大手だけに限定せず、地域・職種特化型の派遣会社と組み合わせることが効果的です。
適正な社数は求人によって異なります。社数よりも、異なる地域、職種、集客経路を持つ会社へ依頼できているかを確認してください。
登録者の重複、求人条件の競争力不足、派遣会社内での優先順位、職種・地域との相性などが考えられます。
候補者への案内状況、新規募集の実施有無、求人媒体への掲載予定、条件に対する求職者の反応を定期的に確認すると判断しやすくなります。
必須条件を絞り、派遣料金や勤務条件を市場に合わせ、候補者提案への回答を早めることです。派遣会社が動きやすい情報を渡すことも重要です。
厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」
労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」
労働政策研究・研修機構「『人材(人手)不足の現状等に関する調査』結果」
リクルートワークス研究所「中小企業の人手不足への対応策を概観する」
この記事の監修者

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