
「何社に依頼しても、紹介される人材は変わらない」
派遣会社との取引が長い企業ほど、このように感じることがあります。実際、同じ求人を複数社へ依頼しても、紹介が来なかったり、似た候補者ばかりが提案されたりするケースは珍しくありません。
しかし、どこの派遣会社に頼んでも同じという認識は、半分正しく、半分間違っています。 同じ人材市場から集客しているため、候補者が重なることはあります。一方で、派遣会社によって集められる人材、動かせる人材、紹介までの速度には明確な差があります。
その差を理解しないまま、知名度や営業担当者の印象だけで依頼先を選ぶと、採用機会を逃しかねません。
派遣会社の実力を判断するうえで重要なのは、登録スタッフの総数ではありません。見るべきなのは、その求人に合う人材へ、どれだけ早く接触し、応募意思をつくれるかです。
派遣会社ごとの差は、主に次の領域に表れます。
比較項目 | 派遣会社によって差が出る理由 |
|---|---|
得意職種 | 集客媒体や過去の派遣実績が異なる |
得意エリア | 支店網、地域での知名度、登録者層が異なる |
人材の年齢層 | 利用する媒体や広告表現が異なる |
紹介スピード | 社内連携やスタッフ管理方法が異なる |
応募意思の形成 | コーディネーターの説明力に差がある |
定着率 | 就業後のフォロー体制が異なる |
つまり、派遣会社は単なる「人材データベース」ではありません。候補者を集め、求人を説明し、就業意思を形成する営業組織でもあります。
求人企業から見ると、派遣会社ごとに独自の人材を抱えているように見えます。しかし実際には、多くの派遣会社が同じ求人媒体、検索エンジン、求人広告、登録サイトを利用しています。
求職者側も、1社だけに登録しているとは限りません。複数の派遣会社に登録し、条件の良い仕事を比較することが一般的です。
そのため、企業が派遣会社を増やしても、接触できる候補者の母集団が大きく変わらない場合があります。依頼社数を増やすことと、人材市場を広げることは同じではありません。
帝国データバンクの調査では、2026年4月時点で非正社員不足を感じる「人材派遣・紹介」企業は60.0%に達しています。派遣会社もまた、企業へ紹介できる人材の確保に苦戦しているのです。
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」
また、同調査では、正社員不足を感じる企業は全体の50.6%でした。「運輸・倉庫」は65.9%、「建設」は65.7%と、派遣需要の強い業界ほど人材獲得競争が激しくなっています。
つまり、紹介が来ない原因を派遣会社の営業努力だけで説明することはできません。市場全体で、限られた人材を多くの企業が取り合っています。
派遣会社が公表する登録者数には、過去に登録した人、現在就業中の人、連絡が取れない人などが含まれる場合があります。
企業が必要としているのは、登録者数ではありません。
現在仕事を探している
勤務地や時間が合う
必要な経験や資格がある
すぐに職場見学へ進める
この条件を満たす「稼働可能人材」が何人いるかです。登録者100万人の会社よりも、特定地域で20人の稼働可能人材を把握している地域密着型の派遣会社が強いこともあります。
求人企業と商談する営業担当と、派遣スタッフへ仕事を案内する担当者は、別であることが少なくありません。
営業担当が求人内容を正しく社内へ伝えられなければ、候補者検索は始まりません。また、コーディネーターが仕事の魅力を説明できなければ、条件に合う人材がいても応募には至りません。
例えば「倉庫内作業」とだけ伝える場合と、「扱う商品」「重量物の有無」「作業工程」「職場の人数」まで伝える場合では、求職者の反応が変わります。紹介力とは、人材保有力だけでなく、求人を求職者向けに翻訳する力でもあるのです。
失敗しやすい企業 | 成功しやすい企業 |
同じ求人票を一斉送信する | 優先条件と緩和条件を伝える |
必須条件を増やし続ける | 絶対条件を3つ以内に絞る |
紹介が来るまで待つ | 紹介が難しい理由を確認する |
大手だけに依頼する | 職種・地域特化型も活用する |
不採用理由を伝えない | 派遣会社へ具体的に共有する |
職場情報を最低限しか出さない | 写真や一日の流れまで共有する |
成功企業は、派遣会社を増やす前に、求人条件が市場に合っているかを確認します。時給、勤務時間、通勤手段、年齢イメージ、業務負荷などを競合求人と比較し、変更できる条件を明確にしています。
一方、失敗しやすい企業は、「良い人がいれば紹介してください」と依頼します。良い人の定義が曖昧なため、派遣会社側も候補者を選べず、優先順位が下がります。
新たな派遣会社へ依頼する際は、登録者数ではなく、次の質問をしてください。
この職種で直近3か月に紹介実績があるか
勤務地周辺に稼働可能な登録者がいるか
登録外から新規集客する場合、何日程度かかるか
求職者には求人をどのように説明するか
紹介が難しいとすれば、どの条件が原因か
就業後は誰が、どの頻度でフォローするか
この質問への回答が具体的であれば、現場と人材市場を理解している可能性が高いでしょう。反対に、「探してみます」「登録者は多いです」という回答だけでは、再現性を判断できません。
厚生労働省によると、令和6年度の派遣労働者数は約220万人、派遣先件数は約86万件です。派遣事業の実績があった事業所も3万3,207所あり、派遣市場は多くの事業者によって構成されています。
これほど多くの派遣会社から、自社の職種や地域に強い会社を個別に探すのは容易ではありません。商談、求人説明、進捗確認を会社ごとに繰り返せば、人事担当者の工数も増加します。
このような課題を解決する仕組みとして、ハケンバンクがあります。ハケンバンクが目指しているのは、派遣会社を探すサービスではありません。求人企業が、派遣会社を探さなくていい状態をつくるサービスです。
「どこの派遣会社に頼んでも同じ」と感じるのは、各社が同じ人材市場から集客しているためです。しかし、得意職種、地域、人材への接触速度、求人の伝え方、就業後のフォローには明確な差があります。
重要なのは、依頼する派遣会社の数ではありません。自社の求人と相性の良い派遣会社へ情報を届け、紹介しやすい求人へ整えることです。
紹介が来ないときは、派遣会社を追加する前に確認してください。条件が市場に合っているか。求人の魅力が正しく伝わっているか。そして、その職種と地域に強い派遣会社へ、本当に届いているか。
必ずしもそうとは限りません。大手は登録者数や拠点数に強みがありますが、地域や専門職種では、中小・特化型の派遣会社が強い場合もあります。
一概に社数では決められません。同じ特徴の会社を増やすより、地域型、職種特化型、大手など、異なる人材供給経路を持つ会社へ依頼する方が有効です。
料金だけが原因とは限りません。時給、勤務地、勤務時間、業務内容、通勤手段など、候補者が求人を選ぶ条件を総合的に確認する必要があります。
会社規模を判断する材料にはなりますが、紹介可能人数とは一致しません。対象地域・職種における稼働可能人材と直近の紹介実績を確認してください。
一般的には可能です。ただし、連絡窓口や選考基準を統一しなければ、管理工数が増えます。各社への回答速度や情報共有にも注意が必要です。
厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」
労働政策研究・研修機構「派遣のメリット・デメリット」
この記事の監修者

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