
「大手を含めて10社以上の派遣会社へ依頼しているのに、誰も紹介されない。」
建設業や物流業、製造業など慢性的な人材不足に悩む企業では、このような声を耳にする機会が少なくありません。
多くの企業はこの状況になると、
もっと派遣会社を増やそう
営業担当を変えよう
派遣料金を上げよう
と考えます。
しかし実際には、それでも状況が変わらないケースが数多くあります。
その理由は、「派遣会社の数が足りない」からではありません。
本当の原因は、人材派遣市場の構造そのものにあります。
この記事では、求人企業が意外と知らない「派遣会社の裏側」と、人が集まらない本当の理由について解説します。
まず知っておきたいのが、派遣会社は人を生み出すことはできないという事実です。
派遣会社が保有しているのは、
登録スタッフ
自社で募集している応募者
過去登録者
既存スタッフとのネットワーク
です。
つまり、派遣会社を10社に増やしたからといって、市場に存在する人材が10倍になるわけではありません。
近年、日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。さらに、多くの業界で求人倍率が高止まりしており、人材そのものが不足しています。
指標 | 現状 |
|---|---|
生産年齢人口 | 長期的に減少傾向 |
有効求人倍率 | 多くの地域・職種で1倍超 |
建設・物流・製造 | 慢性的な人材不足 |
つまり、派遣会社同士も限られた人材を奪い合っている状態なのです。
求人企業は「派遣会社を増やせば人も増える」と考えがちですが、市場全体の母数が減っている以上、それだけでは根本的な解決にはなりません。
「10社も依頼したのに紹介が来ない。」
この背景には、派遣会社同士の人材プールが重複しているという事情があります。
例えば物流倉庫の求人であれば、
Indeed
求人ボックス
Googleしごと検索
各種求人媒体
などから求職者が応募します。
つまり、派遣会社が違っても、集客している求職者層は似ています。
A社にも登録している人がB社にも登録している。
こうしたケースは決して珍しくありません。
その結果、
「紹介できる人がいません。」
という回答が複数の派遣会社から返ってくることになります。
依頼先を増やすことは決して無意味ではありませんが、「同じ市場の中で取り合っている」という構造を理解しておくことが重要です。
求人企業からすると、どの会社も「派遣会社」です。
しかし実際には、それぞれ得意な業界・職種が大きく異なります。
派遣会社 | 得意領域 |
|---|---|
A社 | 建設・施工管理 |
B社 | 物流・軽作業 |
C社 | 一般事務・オフィスワーク |
D社 | 製造・工場 |
E社 | コールセンター |
例えば、施工管理に強い派遣会社へ一般事務の求人を依頼しても、十分な紹介は期待できません。
逆に、物流に強い会社へ施工管理を依頼しても同様です。
重要なのは、「派遣会社を増やすこと」ではなく、「自社求人と相性の良い派遣会社へ届けること」です。
派遣会社は、すべての求人を同じように扱っているわけではありません。
営業担当は日々、多くの求人の中から「紹介できそうな案件」を選んでいます。
紹介しやすい求人には次のような特徴があります。
勤務地が分かりやすい
駅から近い
就業条件が明確
教育体制が整っている
現場責任者の対応が良い
長期就業が見込める
一方で、紹介しづらい求人には、
残業時間が不明
現場情報が少ない
教育担当がいない
離職率が高い
就業イメージが湧かない
といった特徴があります。
派遣会社は「紹介できるか」だけではなく、「長く働いてもらえるか」を重視しているのです。
「時給を100円上げたのに応募が来ない。」
これは決して珍しい話ではありません。
もちろん給与は重要です。
しかし求職者は給与だけで仕事を決めているわけではありません。
例えば、
人間関係
職場環境
通勤時間
教育制度
勤務時間
将来性
などを総合的に判断しています。
派遣会社も同様です。
紹介後にすぐ辞めてしまう求人より、長く働ける求人を優先して紹介します。
つまり、時給だけを改善するのではなく、「働きやすい職場づくり」も人材確保には欠かせません。
求人企業は「派遣会社を選んでいる」と考えがちです。
しかし実際には、派遣会社も求人企業を評価しています。
営業担当者同士では、
離職率
現場対応
クレームの有無
契約条件
支払い状況
担当者とのやり取り
などが共有されることがあります。
つまり、紹介人数は求人票だけで決まるものではありません。
企業としての信頼性や現場の評判も、紹介のしやすさに影響を与えているのです。
ここまで見てきたように、人が集まらない理由は、派遣会社が悪いからではありません。
市場全体が人材不足であり、さらに派遣会社ごとに、
得意領域
登録スタッフ
営業方針
集客方法
が異なるため、単純に依頼先を増やしても成果は変わらないケースがあります。
重要なのは、
「何社依頼するか」ではなく、「どの派遣会社へ、どのように求人を届けるか」です。
従来の派遣活用では、
求人企業が一社ずつ派遣会社を探し、
問い合わせ、
契約し、
求人内容を説明していました。
しかし、人材不足が深刻化する現在、この方法だけでは十分な人材確保が難しくなっています。
これからは、一つの求人情報を幅広い派遣会社へ効率よく届け、それぞれの得意領域や登録スタッフを活かして紹介を受けるという考え方が重要になります。
派遣会社を探すことではなく、「必要な派遣会社につながる仕組み」を持つことが、人材不足時代の新しい採用戦略といえるでしょう。
派遣会社に10社依頼しても人が集まらない理由は、「派遣会社が悪い」からではありません。
背景には、生産年齢人口の減少や慢性的な人材不足という市場環境、派遣会社ごとの得意領域、求職者が重視する職場環境など、複数の要因が存在します。
これからの採用では、「派遣会社を何社使うか」という視点だけでなく、「自社の求人が紹介されやすい状態になっているか」「幅広い派遣会社へ効率よく求人を届けられる仕組みがあるか」という視点が、これまで以上に重要になります。
人材不足が続く時代だからこそ、採用活動そのものではなく、「人材市場の構造」を理解することが、人材確保への第一歩となるでしょう。
参考資料
厚生労働省「一般職業紹介状況」
厚生労働省「労働者派遣事業報告」
総務省「国勢調査」
総務省統計局「労働力調査」
独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)「労働市場に関する各種調査」
この記事の監修者

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